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教育に新しいこころみ(教育タイムスH17.12.21号に掲載)
-伝法幼稚園、此花中学校-
幼中連携を推進 
   荒れから立ち直りを       此花中学校

「幼稚園児と中学生」一見、縁のない関係のように思えるが、この両者の取り合わせは面白い。両者は一緒にいるだけで楽しい。

「教育は学校だけで成り立たない。地域の子供は共に地域の力で育てよう」。

そんな視点で、地域の子育てコミュニティづくりに取り組んでいるのが大阪市立此花中学校(此花区高見、武林勇治校長)である。荒れに荒れていた中学校を再生させる教育活動の一環として、三年前から幼稚園との交流を行っている。

 此花中学校と伝法幼稚園(此花区伝法、畑中久子園長)は約三百メートルしかはなれていない交流が始まった経緯はこうだ。同じ大阪市立校園に勤務する教職員として連帯感を深めようと、中学校側からの呼びかけに幼稚園が応えた。先生同士の情報交換が始まったが話してみると同じ大阪市の教員なのに互いのことをあまりにも知らないことが分かる。「中学校での生活指導の課題の芽は幼児期から始まっている。中学校にも襟を正すべきことが沢山ある。しかし責任の押し付け合いをするのではなく、子育ての課題を共有しようとなったのです。」武林校長と細川紀代子前園長が意気投合し、先生だけではなく、子どもや保護者同士の交流もスタートしようとなった。まず、家庭科の授業として三年生が幼稚園にでかけて保育体験を毎年実施。今年も六月に行われ、粘土や水てっぽう、シャボン玉、一輪車などで遊んだ。お昼の給食の後は、園児の仕上げ歯磨きにチャレンジ。楽しく歌ったりおしゃべりしながら過ごした。「同じ地域に住む子どもたちだから共に育ってほしい。園児たちはお兄ちゃんお姉ちゃんに憧れの気持ちを持っています。生徒さんたちは元気な園児たちに圧倒され、最初は照れながらもすぐに打ち解けました。女子生徒の中には幼稚園の先生になりたいと言う生徒がいて、嬉しかったです。」と今春赴任した畑中園長は話す。「あのやんちゃな生徒が、あんなに生き生きとした笑顔を見せるなんて。生徒は学校で見せる突っ張った姿だけではない。教師の対応次第で子どもらしい優しい面をたくさん見せてくれる。生徒を信頼したい。」と、生活指導の担当教員も、学校の再生に自信を深めていく。武林校長も幼稚園に出かけ、「子どもにとって人生最初の師は親」と保護者に幼児教育の重要性を講話で訴えている。また、中学校の体育館を幼稚園に開放して授業をしてもらったり、体育大会に子どもたちが参加して、幼稚園児と中学生が手をつないで演技を楽しむ。園児の保護者も、小さい子どもにやさしく接する中学生の素顔にふれることで、思春期の多感な生徒への理解が深まる。

子どものために頑張る教師がいる

 此花中学校は、昭和五十一年頃から大阪市内でもっとも荒れている中学校の一つとして新聞の全国版に報道されたが、現在は荒れから立ち直りつつある。以前は多かった校舎内を浮遊する生徒は激減。校舎や校内はきれいに整い、エスケープや授業を妨害する生徒はほとんどいなくなった。各教室では授業に向き合う生徒の姿が見られる。「生活指導に地域活動にと、教職員の献身的な努力のお陰で校長としてやってこられました。苦情も激減し、学校への不信感で批判的だった保護者や地域住民も、部活動の生徒を中心とした地域の清掃や先生方の校区内巡回活動、素早い家庭訪問などに「学校も大変だな」「子どものために頑張っているな」と評価をしてくれます。真剣に汗をかく先生方に脱帽です」と武林校長。

薄皮を剥ぐような根気強さと温もりを

四年前に赴任してきた武林校長は、学校愛の深さで教職員をぐいぐいと引っ張るリーダーシップを発揮。学校を再生させるための生活指導基本方針として、ハード面では、?教育環境の整備(日々の美化活動及び破損個所の早期修復)?課業中の校内巡視活動及び情報の共有(見過ごさない・見逃さない)?校区内巡回活動と地域へのアピール(教職員の心意気を示す)を掲げた。「どの中学校でも同じですが、教職員の共通理解とチームワークがないとやりきれません。核となる先生方が育っています。」破損が目立っていたトイレや窓ガラスなども徐々に整備された。ソフト面で武林校長が掲げたのが「教職員自らが襟を正して範となる」(服装・言動・たなごころの上での対応)。「四半世紀にわたって荒れを繰り返していたので一筋縄ではいかない。薄皮を剥ぐような根気強さに加え、常にゆとりと温もりのある対応をと呼びかけています。」また学校経営方針の柱に一人ひとりの学力向上がある。授業研究や補習にも力を入れており、「これからは授業で勝負する学校へと歩みを強く進めていきたい」と意欲的に語る。此花中学校は平成十四・十五年度の二年間、文部科学省の「生徒指導総合連携推進事業」の研究校として指定され、学校での取り組みを中心に此花区内の「情報連携」から「行動連携」へと実践を展開した。このため「荒れから立ち直った中学校」として全国的にも知られる学校となった。今年十一月二十四日には奈良県・生駒市教委の教育関係者が視察に訪れた。来年三月初旬には広島市教委からもオファーが入っている。

地域に子育てのコミュニティを

武林校長は、「ようやく落ち着きを取り戻しつつあり、まだまだ課題も多い。しかし、いいところも悪いところもすべてお見せします。地域に開かれた学校づくりのスタンスはこれからも強めていきたい」ときっぱり。伝法地区は、ふとん太鼓の伝統行事で知られ、遣唐使の出発地点である澪標(みおつくし)住吉神社などもあり、歴史と伝統のある地域、幼中連携が軌道に乗ったことで、今後は小学校、さらには高校までをも巻き込んだ幼・小・中・高校の一貫した教育コミュニティをつくりたいと意気込む。


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